ならめがね厳選!4寺院・名写ギャラリー
ここからは、4寺院の公式インスタの投稿から、編集部がぐっときた写真を紹介したいと思います。
といっても4寺院には、素敵な写真がたくさんあって、選びきれないほど。
そこで対象を「今年の4月初旬から6月中旬」の投稿に絞ることにしました。
なぜならこれは、コロナ禍のために日本中が不要不急の外出を控えていた期間。
4寺院はそのとき、「お寺の写真を見てもらって、少しでも心の安らぎになれば」と、拝観に来られない人たちの気持ちに寄り添うインスタを投稿していたからです。
「世間が不安一色の今、仏教者として自分にできることは?」
自らにそう問い続けた4寺院の写真を、厳選して3点ずつ。 4者4様。僧侶の人柄が伝わる名写をどうぞ。
岡寺
強く美しい古刹の祈りを、この1枚に込める
photo by Kaiyu Kawamata
4月8日投稿の「鍾馗(しょうき)瓦」の写真。鍾馗とは悪疫除けの守り神で、その瓦が岡寺に奉納されたときの1枚。小さくても勇ましそうな鍾馗さんと、その背後で優しく微笑む大きなご本尊さまとの対比が印象的で、ほっこりします。
4月14日投稿の「施無畏印(せむいいん)」の写真。ご本尊・如意輪観音座像の右手は、公式インスタ初めての写真として4年半前に一度投稿されたことがありますが、この写真は手のひらに光が射した右手を画面いっぱいに写していて、より力強く、人々を励ましてくれているように感じます。恐れなくていいんだよ、と。
4月20日投稿の「境内のシャクナゲ」の写真。このとき緊急事態宣言が発令されており、お寺に来られない人のために「せめて美しい花の写真を」との思いが伝わる1枚。華やかなピンクのシャクナゲと、涼し気な青紅葉との共演が素敵。
長谷寺
背景にあるすべてを五感ですくい取る
photo by Koki Takiguchi
4月1日投稿の「お写経」の写真。僧侶が筆を止め、本堂に目を向けた瞬間を写し止めた1枚。不安な心をそっと鎮めてくれそうな、凛とした静けさがここにはあります。この投稿を見て、おうちに居ながらできる「長谷寺の写経」を始めた人も多いことでしょう。
5月13日投稿。写真ではなく動画です。新型コロナウィルスの早期終息を祈って、長谷寺の僧侶たちが読経する様子を内側からとらえています。大勢の僧侶が天空の外舞台に立ち、世界のために祈りを捧げるひたむきな姿は、心の奥を揺さぶります。
6月15日投稿の「アジサイ」の写真。見た目にも涼やかな青紫の花房と、本堂へと続く石段の配置が絶妙で、さすがのひと言。やや青みがかった色温度は、梅雨どきの湿り気を感じさせ、アジサイ本来の美しさをいっそう引き立てています。
室生寺
気負いのない撮影スタイルで日々の境内を
photo by Jyunyu Yamaoka
5月21日投稿の「カエルの卵」の写真。この日、自然豊かな広い境内でインスタ担当者がレンズを向けたのは、モリアオガエルの卵でした。素朴でフラットな写真ながら、そこに添えられた温かなキャプション。小さな命へのエールに、胸がじんとします。
5月25日投稿の「五重塔」の写真。「写真家・三好和義さんが撮った写真が凄くて、それを真似して撮った」という1枚で、斬新な切り取りによる美しいリズム感が生まれています。それを告白せずにいられない室生寺さんの誠実さも含めて、味わい深い写真です。
6月7日投稿の「太鼓橋」の写真。澄み渡る空の青、境内を包む新緑のグラデーション、参拝者を迎えるため両手を広げているかのような赤い欄干。古来、この光景にどれだけの人が目を細めてきたことか。室生寺に焦がれる人の、心の原風景ともいえる1枚です。
般若寺
やわらかな発想で、小さきものに光を当てる
photo by Kennin Kudo
6月8日投稿の「観音石仏」の写真。「コスモスは秋」というイメージがありますが、般若寺ではこの季節、初夏コスモスが咲き、アジサイとの華やかなコラボも。アングルを工夫し、観音さまが花を手にしているかのような配置が秀逸。優しくて可愛い写真です。
6月16日投稿の「アジサイ」の写真。境内に咲いていたアジサイを水鉢に生けたところ、その花房にカタツムリがいて、思わず撮った1枚だとか。キャプションには「今さら気づいてごめんね」と謝る場面も。ややハイキーな露出で、清潔感のある色合いが◎
6月19日投稿の「アジサイ」の写真。本堂前にブーケのようなアジサイを置いたときの1枚。この日、県境をまたいでの移動が緩和されましたが、参拝者が来るとは限らず。それでも「これで心がぱっと明るくなる人がいてくれたら」という思いが伝わってきます。
お寺は祈りの聖地。まずはご本尊にお参りを
4寺院それぞれの個性が光る名写ギャラリー、いかがでしたか。
写真を見て、「お寺へ花や風景の写真を撮りに行きたいな」と思われた方もいらっしゃることでしょう。
でもその前に、撮影ルールとマナーの確認を。
ここでは、4寺院から寄せられた「お寺で撮影するときのNG事例」をまとめておきます。
●「撮影禁止」「立ち入り禁止」となっているところでの撮影はNG
●花を折ったり、花壇の中に入って地面を荒らしたり、柵に乗ったりなどの危険行為はNG
●参道の真ん中に三脚を立てて場所を占拠するなど、自分本位な行為はNG
●参拝されている方に「撮影の邪魔だから」と文句を言うのはNG
●僧侶をモデルと勘違いして、本人の承諾なく撮影するのはNG
これらは、岡寺・長谷寺・室生寺・般若寺に限らず、たいていのお寺で共通するルール&マナーといえます。
その根底にあるのは、「お寺は祈りの聖地」であるということ。
まずは、ご本尊にお参りし、ご挨拶を。
そのうえで、ルールを守りながら、お寺での撮影を楽しんでくださいね!
このSpecial座談会も、いよいよクライマックス!
最終回となるVol.03は、再び座談会の本流へ。
「#人気寺院のインスタ・ハウツー」と題し、4寺院それぞれの経験に基づいたインスタ・メソッドを、具体的に掘り下げてご紹介します。
「インスタデビュー、最初の1枚は?」「投稿のタイミングとコツって?」「ハッシュタグどうしてる?」「コメントにどう返す?」…などなど。
気になる人気寺院のアレコレを、惜しみなく大公開。
お楽しみに!
2020年7月17日公開
岡寺 [ 詳細情報はこちら ]
長谷寺 [ 詳細情報はこちら ]
室生寺 [ 詳細情報はこちら ]
般若寺 [ 詳細情報はこちら ]
※本記事の取材・撮影は2020年6月、新型コロナウィルス感染拡大防止の対策を講じた環境のもとで行いました。
※記載の情報はすべて同年6月末現在のものです。
取材協力/岡寺、長谷寺、室生寺、般若寺
撮影協力/橋本屋
聞き手・文/ならめがね編集部、上乃ゆか
撮影/中井秀彦