そもそも「如意輪」って何?
如意輪観音は密教のほとけ。変化(へんげ)観音のひとつです。ただその成立ははっきりしていません。
「如意輪」のサンスクリット語のもともとの意味は「輪のようにどこにでも転がっていく如意宝珠」とする説が有力とされています。
如意宝珠とは、すべての願いをかなえてくれる宝の珠です。如意輪観音はこれを身体の真ん中で手にしています。
人々に救いの手を差しのべる観音菩薩のなかでも、如意輪観音は如意宝珠あっての観音さまといえます。
6本の手にはそれぞれ意味がある
如意輪観音の思惟のポーズは、人々をどうやって救おうか思案しているしるし。
下に伸ばしている腕は、何事にも動じない意志をあらわしています。
ハスのつぼみは諸々の罪を清め、消失していますが本来は念珠も持ち、生きとし生けるものの苦を除きます。
そして左の3番目の手で捧げ持つ「輪宝」は、仏の教えを説き人々の迷いを砕くもの。
これってお釈迦さまそのもの、仏教のストライクゾーンでは。
リラックスしたお姿のなかに、仏法の根本が込められているような気がします。
天皇が心のうちを見せた観音さま
ところで如意輪観音を念持仏としていた後醍醐天皇は、同じく如意輪寺にまつられる蔵王権現(ざおうごんげん)も念持仏としていました。
蔵王権現の前では護摩を焚いたりお経を読んだり、強い気持ちで信仰する姿を人々に見せていたのに対し、如意輪観音を拝む姿は誰にも見せなかったのだそうです。
観音さまの前でだけは自分をさらけ出し、弱音を吐くこともできたのだろうと、お寺の方は後醍醐天皇の気持ちをおもんぱかります。
命を捧げて戦う人たちの前では自身の心の揺れを見せまいとする決意のあらわれだったのでしょう。
時代を超えて、今の私たちの心に寄り添う
現在の本堂は江戸時代に建てられたもので、後醍醐天皇の時代はもっと小さなお堂でした。
お寺によると、お坊さんが4人も入ればいっぱいになっただろうとのことです。
そんな小さなお堂でたった一人、観音さまと向き合いながら何を思い、どんな気持ちを投げかけられたのでしょう。
如意輪観音さまは、後醍醐天皇をはじめ多くの人々の思いを受け止めながら、歴史の足跡を胸に秘め、今も私たちを見守り続けてくださっています。
要チェック! 如意輪観音さまにお会いできる「菊まつり」
如意輪寺では、後醍醐天皇ご生誕の日(11月2日)をお祝いして、11月1日(月)~11月22日(月)の間、菊花を奉納する「菊まつり」が開かれます。
如意輪観音とお会いできるのは、そのうち3日間だけ。年に一度限りの貴重なチャンスです。
なお「菊まつり」期間中は、特別御朱印の実施や、御霊殿の特別公開もあります。
▼問い合わせや最新情報は如意輪寺公式HPにてご確認ください
https://nyoirinji.com
秘仏 御本尊 如意輪観世音菩薩御開帳
2021年11月16日(火)~11月18日(木)
拝観料/1500円(宝物殿等の拝観料と特別授与品含む)
拝観時間/10:00~、10:30~、11:00~、11:30~、13:00~、13:30~、14:00~、14:30~
※各時間10人まで ※予約制ではなく当日受付のみ
菊まつり特別御朱印
2021年11月1日(月)~11月22日(月)
御朱印代/500円 ※枚数限定
後醍醐天皇御霊殿 特別公開
2021年11月2日(火)~11月18日(木)
拝観料500円
2020年10月30日公開
2021年11月12日更新
※2021年11月現在の情報です。
取材協力/如意輪寺
取材・文/中島久美、ならめがね編集部
撮影/中井秀彦