
聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめ、奈良時代の貴重な宝物を間近で鑑賞できる正倉院展。
今年も奈良国立博物館で、10月28日から開催されています。
正倉院に納められている宝物およそ9000件のうち、今展では59件を公開。うち6件が初出陳です。
75回目にしてまだ初出陳の品があるなんて、正倉院展の奥深さをあらためて感じます!
※掲載している写真はすべて、許可のもと撮影を行っています。

今展も見どころがたくさん!
聖武天皇のご遺愛品で、天皇が身に着けたかもしれないという「九条刺納樹皮色袈裟(くじょうしのうじゅひしょくのけさ)」をはじめ、毎年注目度が高い琵琶は、カエデ材を用いた「楓蘇芳染螺鈿槽琵琶(かえですおうぞめらでんのそうのびわ)」が展示されています。

数々の宝物のなかでも編集部が心惹かれたのは、「青斑石鼈合子(せいはんせきのべつごうす)」。
石製の小さな容器で、蓋がスッポンの形になっています。
その姿は驚くほど写実的で、左前足の躍動感たるや、今にも歩き出しそうなほど。
正倉院宝物の中でもスッポンの造形は唯一なのだそう。

また、四角い麻布に墨で人の顔を描いた「布作面(ふさくめん)」も必見。
目の部分が開いており、舞楽で使われた可能性が高いとされる素朴なお面です。
以前、弊誌『ならめがね』Vol.5の「天平衣装特集」で山口千代子先生が再現した布作面を掲載したことがあるので、親近感があります(笑)
下がり眉にひげの表情が個性的で、奈良時代の人が描いたと思うと感慨深いです。

今年は東大寺の初代別当・良弁(ろうべん)の1250年御遠忌にあたることから、良弁の自筆の文書にも注目が集まっています。
「正倉院古文書正集 第七巻」には、東大寺の造営や管理を行う造東大寺司(ぞうとうだいじし)に経巻の借用を申し入れた文書があり、そこに良弁の署名が記されています。

現在、東大寺では良弁1250年御遠忌に合わせて、法華堂で「良弁僧正坐像」(国宝)を特別公開しています(11月19日まで)。
この機会に合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。
そのほか、まだまだご紹介し足りない宝物がたくさんあります。
ぜひ会場で、魅力あふれる宝物をご覧ください。

■会期:令和5年10月28日~11月13日
■会場:奈良国立博物館
※観覧には原則、事前予約制の「日時指定券」の購入が必要です。奈良国立博物館観覧券売場での販売はありません。
■公式URL https://shosoin-ten.jp/
■X https://twitter.com/shosointen
取材協力/奈良国立博物館
取材・撮影/編集部