
吉野山の中腹にたたずむ如意輪寺。
こちらの本堂には、知る人ぞ知る秘仏がおまつりされています。
気高く麗しき、如意輪観音――。
そのお姿を、今回メディアとして初めて撮影させていただきました。
間もなく始まる秋の特別開帳に向け、如意輪観音の魅力をたっぷりお届けします!
今年から変更!秋に御開帳されます

吉野の如意輪寺は、南北朝時代に後醍醐天皇の勅願寺でもあった古刹です。
ご本尊は「如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜおんぼさつ)」。
秘仏としてこれまで毎年4月の3日間だけ開扉されていましたが、令和2年より開扉が11月になりました。多くの人で賑わう桜の季節よりも、ゆっくり拝観できる時期にというお寺のはからいです。
今年から、紅葉に彩られる秋の吉野で、如意輪観音さまと静かに向き合うことができます。
リラックスしたお姿に心がほぐされます

如意輪寺の如意輪観音は手が6本。
立膝をついて、1本の手は頬にあてる思惟(しゆい)のポーズをとります。

なんともリラックスしたお姿のほとけさまです。
まるで「そんなに緊張しなくてもよいのですよ」と諭してくれるよう。
とはいえ、凛としたお顔には気高さがあらわれ、このリラックスした雰囲気のなかにも厳しさがにじみ出ます。
心をほぐして引き締める――。
お姿を拝んでいるうちに、自然に心が洗われていくようです。
運慶を継承する仏師の作?

像については調査の途中ですが、鎌倉時代、慶派仏師それも運慶(うんけい)の作風を継承する仏師の手によるのではないかとされています。
彩色はその後のもので、ずっと秘仏であったせいか、端正なお顔の仕上げのほか衣紋の切金文様などが美しく残っています。
如意輪寺の開基は平安時代。
「如意輪堂」と呼ばれていたことから、当初から如意輪観音がまつられていたと推測されます。
創建時のご本尊は行方がわからず、今のご本尊の胎内にある可能性も考えられ、そちらの調査も待たれるところです。
後醍醐天皇が信仰された如意輪観音

如意輪寺の如意輪観音像は、後醍醐天皇の念持仏でもありました。
後醍醐天皇は鎌倉幕府を倒し天皇親政の実現を目指しますが、吉野に逃れて南朝を樹立。京の奪還がかなわないまま崩御されます。
まさに動乱の時代の中心にあった方でした。仏教とくに真言密教に深く帰依し、吉野に入ってから、この如意輪寺を勅願寺と定めています。
今は浄土宗のこの寺も当時は真言密教の寺。後醍醐天皇はご本尊の如意輪観音を厚く信仰したそうです。