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知りたかった室生寺寳物殿【インタビュー編】

「インタビュー編」では、寳物殿建立の意義やその舞台裏に迫ります。
寳物殿は当初、2020年3月のオープン予定でしたが、コロナ禍のため延期に。しかし去る9月5日、ついに一般公開が始まりました。
開館の喜びに包まれるオープン初日、室生寺執事長・小田修史さんを訪ねました。

総力特集!知りたかった室生寺寳物殿【ガイダンス編】

「仏さまが降りてこられて、参拝しやすく」

一般公開前日に行われた開館式典の様子。室生寺座主(ざす)の網代智明(あじろ ちめい)さんらによるテープカットが行われました(2020年9月4日撮影)

-寳物殿は、コロナ禍がなければ春に開館が予定されていました。ようやく開館がかなった今のお気持ちは?

本当にありがたいことです。ぜひ多くの方にお参りしていただきたいと思います。
室生寺の境内は山の斜面にあり、仏さまがいらっしゃるお堂へは、長い石段を上がっていただかねばなりませんでした。
しかし今回、約3分の1の仏さまが寳物殿に降りてこられたことで、足が不自由でお堂への参拝が難しかった方も、お参りしやすくなったのではないかと思います。

金堂へと続く石段「鎧坂(よろいざか)」(2020年4月撮影)
室生寺執事長・小田修史(おだ しゅうし)さん。「これまで弥勒堂にいらっしゃった釈迦如来さまのきれいな衣紋(えもん)や、金堂にお祀りされていた十一面観音さまの鮮やかな彩色(さいしき)なども、ぐっと間近にご覧いただけますよ」

-まさに今、コロナ禍で不安をお持ちの方々も、十一面観音さまにお会いすることで心安らかになれそうです。

そうですね。十一面観音さまというのは、十一の顔に変化して衆生を救う仏さまです。
「いろんな苦難を払っていただきたい、願いをかなえていただきたい」。信仰する我々一般の民衆のそういう思いが、あの十一面観音さまの形になっていったのではないのかなと私は思います。

国宝・十一面観世音菩薩立像。このお方のおかげで、古今どれだけの人が心を救われてきたことでしょう

信仰には、時代時代によって流行があったと思います。
室生寺を愛してくださったのは、最初は病気を治していただこうとお薬師さまにおすがりする方々でした。

次いで観音信仰が起こり、平安から鎌倉にかけて、人々の苦しみが多かった時代には十一面観音さまがたくさん造られました。
さらに時代が下がってくると、弘法大師さまに厄除けをしていただこうと人々がお参りに来られました。

お大師さまは、平安時代に京の都で疫病が大変流行したときに、ご祈祷をされて都からすべての疫病を退散させたありがたいお方です。
今、世の中では新型コロナウイルスが流行っておりますが、ぜひこういう時にはお大師さまもお参りいただきたいと思います。

弘法大師空海像をお祀りする御影堂(みえいどう)。奥之院にあります

「すべてを失うリスク、どう回避するか」

-寳物殿の建立は、いつごろから構想されたのですか?

平城遷都1300年祭のころですから、2010年です。
当時、窓口となる宇陀市の教育長さんと市長さんのところにあいさつに行きましたところ、「室生寺は宇陀市の財産、宝ですから、何なりとお申し付けください」という言葉をいただきました。
それが始まりで、正式に動き出したのは、書類で申請した2014年です。

-寳物殿を建てた目的は?

文化財を保護するためです。
室生寺は、1998年(平成10)の台風7号によって、国宝・五重塔が甚大な被害を受けるという経験をしました。
近年は地球温暖化の影響か、これまでになく急激な温湿度変化や自然災害が起こりやすく、文化財が劣化したり損傷したりするリスクも増えています。 そういった環境の変化から文化財を守るために、寳物殿は建てられました。

あと、私どものような山寺で怖いのは火災なんです。
お堂が点在しているため、火災に遭うと、発見から対応するまでに時間がかかるのです。風があれば一気に燃え広がるおそれもあります。
火災ですべてを失う危険を分散するために、お堂とは別に安置する場所を造ったという面もあります。

寳物殿に「十一面観世音菩薩立像」が搬入されたときの様子。東京国立博物館にて2019年に開催された「特別企画 奈良大和四寺のみほとけ」展の出陳を終えて、室生寺に戻ってこられました

-仏さまをお守りする建物として苦心されたことは?

特に「湿度」ですね。
寳物殿は鉄筋コンクリート造です。
施工後しばらくは、コンクリート中に水分やガスが含まれているため、それらを抜き切る「枯らし」という作業を行わなくてはなりません。残っていると、湿度管理等に影響するからです。

今回、文化庁さんの指導で、館内の空調を1年間かけっぱなしにし、しっかり「枯らし」を行ったうえで、仏像や什宝などを搬入しました。

お運びする際に傷つかないよう、繊細な部位には、綿を和紙でくるんだクッション材があてがわれています

「収蔵は文化財的価値の高いものから」

-十二神将像は元のお堂から、12体のうち半分の6体が寳物殿にお移りになりました。分けられた基準は?

保存状態のいいものから寳物殿に納めさせていただいています。
奈良国立博物館に寄託していた2体(未神と辰神)も、当時一番いい状態のものだったようです。

-収蔵物の選定は、どうやって決められるものなのですか?

何を納めるかについては、思った以上に文化庁さんからの意向もありました。
例えば、鎌倉時代の「華形大壇(けぎょうだいだん)」。金胎両部用として二基が完全に残っている貴重なもので、文化庁さんから「剥落がひどいので、ぜひ入れてください」と。
あと、金堂の「十一面観世音菩薩立像」と弥勒堂の「釈迦如来坐像」も、文化庁さんからの要望でした。

細心の注意を払いながら、和紙を1枚1枚ていねいに取り外していきます。十一面観音さまがお顔をお見せになると、それまで張りつめていた空気も一気にほぐされていくよう

-収蔵物はすべて、室生寺さんが決められたものとばかり思っていました。

文化庁さんの立場として、「文化財的価値の高いものから収蔵する」という方針は当然だろうなと思います。
ただ、金堂のご本尊・釈迦如来立像(国宝)に関して、「本当は寳物殿に入れてもらいたいところですが、ご本尊様は動かせませんね」と譲歩もしてくださいました。

室生寺で最も古い、弥勒堂のご本尊・弥勒菩薩像(重文、奈良時代末期)についても同じです。

傷ついている箇所はないか、学芸員が細部を確認

「仏教も歴史も、物が残っていないと語れない」

-古代から託された宝物を未来へ届ける。寳物殿の果たす役割は非常に大きいですね。

そうですね。寳物殿は、仏さまをお守りし、後世に伝えることを第一の目的にして建てたものです。
「信仰の対象である仏像はお堂にあるべき」という意見もありますが、私としては「その対象自体がなくなったらどうするんですか?」という思いの方が強いです。

仏教も歴史も、物が残っていないと語れません。実証されなければ、それがあったと言い切れない。
大事なのは、後世に残すということ。
そうしないと、室生寺の足跡というものがわからなくなるのです。
仏さまは、お祀りされる場所がお堂であってもどこであっても、「信仰の対象であることは同じ」だと私は思っています。

今まで1200年の間、室生寺は仏さまをお守りしてきました。
これからも私たちは、信仰の対象としての仏さまを、きちんとした形で後世に残していきたいと思っています。

寳物殿 第一収蔵庫

2020年10月16日公開

室生寺の詳細情報はこちら

※2020年10月現在、新型コロナウイルス感染対策のため入館人数を制限中。
▼入館料や拝観時間など詳しくはこちら(室生寺公式HP)
http://www.murouji.or.jp/news/128/

※2020年10月現在の情報です。

取材協力/室生寺
取材・文/ならめがね編集部
撮影/楠本夏彦

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